【中長編】謳えカナリア
2020年8月16日
閉ざされた頽廃の町で終焉を謳う迷い鳥の物語
作品名 | 謳えカナリア |
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作者 | モロクっち(諸口正巳) |
文字数 | 約11万7000字 |
所要時間 | 約3時間55分 |
ジャンル | ダークファンタジー(異世界FT) |
作品リンク | 小説家になろう pixiv |
書籍版 | KADOKAWA(※公式ページ) |
レビュー
「……ねぇ、いっしょに、こんな町、めちゃくちゃにしちゃおうよ」
事故で死んだ女子高生・マツリの魂が迷い込んでしまったのは、雪のように煤と灰が降りつもる、くすんだ色彩の閉ざされた世界だった。
迷い鳥となった少女の魂を捕らえたのは〈赤のマエストロ〉ダムロッシュ。彼の手によって美しい人形の身体を与えられ、「真鍮糸雀(カナリア)」として生まれ変わったマツリは、憂愁を帯びた老紳士、〈調律師〉のアイレンベルグに託される――。
緩慢な死を待つばかりの頽廃的な世界。腐りかけの社会で飼われ、その美貌と美声で人々を愉しませる少女人形たち。そんな中、祖父ほども齢の離れた男に惹かれていく美しい少女と、男の抱くほの暗い狂気――。
じわじわとつめたい不安感が纏わりついてくるような幻想的で倒錯的な世界観と、凄絶で狂気的なクライマックスが圧巻で、嵐のように不穏で烈しい物語。
倦んだ憎悪を燻らせる男と、男を愛した少女の、復讐と破壊のダークファンタジー。
キャラクターpickup
ミツオカ・マツリ
「すごくすてき……。ありがとう、ダム。こんなにきれいに造ってくれて」
「先生の悪口、言わないで!!」
「じゃあ、先生。わたしに、全部教えて。わたし、先生のためならなんでもする」
…事故死して魂だけ異世界に迷い込んでしまった女子高生。〈赤のマエストロ〉によって、真鍮糸雀と呼ばれる少女人形の身体を与えられた。
アイレンベルグ
「早く私のところへおいで。レッスンをしよう……」
「私はアイレンベルグ。ようこそ、この廃れた世界へ」
「好きにしなさい。死を超越した力をもって。何もかも、君の思い通りに―――」
…マツリにレッスンをする〈調律師〉。見上げるほどの長身に見事なロマンスグレーの巻き毛を持つ、秀麗な顔立ちの初老の紳士。
ダムロッシュ
「謝らなくてもいい。よくあることだ。っていうか最初に目を覚ました真鍮糸雀は必ずそうなる」
「どうして、どいつもこいつも、おれのとこから巣立ってくんだ」
「おれのアヴェンタドール。唄ってくれ、おれのために」
…マツリを真鍮糸雀にした〈赤のマエストロ〉。
シリル・オーシャン
「なんだなんだ、レッスンが嫌になって飛び出しちまったのか? 調律は誰がやってるんだよ?」
「こっち来て座んな。診てやるよ」
「レディが取っ組み合いの大喧嘩なんかしてどうする、みっともねえ! それでもお前ら真鍮糸雀か!?」
…町一番の称号を持つ〈黄金のマエストロ〉。マエストロでありながら調律師としても一流の天才。ダムロッシュの親友。