【中短編】花と獣
のちに賢君として名を馳せる粋狂な皇子と、獣の気性を持つ女武者の生涯をたどる和風ヒストリカルロマン
作品名 | 花と獣 |
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作者 | 糸(水守糸子) |
文字数 | 約6万3000字 |
所要時間 | 約2時間05分 |
ジャンル | 架空大河(和風FT) |
作品リンク | カクヨム 小説家になろう |
けれどおまえが望むなら、わたしはやさしい獣になってもよいと思う。そんな戯言ひとつでおまえがわらってくれるのならば。東雲。
小さな島国の東西にそれぞれ帝が立ち、国を二分して相争う動乱の時代。西方帝が第五皇子・東雲が花嵐のなか拾い上げたのは、腹を空かせて泣きわめく赤子だった。
変わり者の皇子が「はな」と名付けて愛した娘はやがて刀をとり、戦乱の世を駆けぬける。
男も女も容赦なく切り裂き噛み殺す、血に飢えた獣のような気性の娘。――だけど、おまえがわたしを呼ぶから。わたしは。
乱れ咲く満開の花群れの下、一心に駆けてゆく少女。狂おしいほどの情を知った獣は、ただひとりのために牙を剥き、息の根がとまるその瞬間まで、はしってはしってはしりつづける。たとえ、同じところへはゆけないのだとしても。
咲き狂う花と屍の山。荒々しくもうつくしく鮮烈な女の生き様を描く、愛おしく清々しい架空伝記譚。
・手に噛みついたりとか、犬の仔みたいなじゃれつきかた。愛を知った獰猛な獣の哀しさが胸に迫る。
・「丸腰で獣を放し、放した獣に尻をかじられ死んじまう男」それはそれはやさしくて滑稽な。
・ぼんくら皇子に拾われた子どもたち、めちゃくちゃ仲悪い…。ふたりとも東雲だいすきか。
・はなの幼少期の逸話やばない? ま~さかり~か~ついだ~ふんふふふ~ん。
・幼少期に限らず一貫してやばかった。
・つめたい印象なのに意外なほど情が深い白雨。長く抜けない薊の棘。「ばかばかしくて、わらえるよ」
・たちの悪いごろつきどもを腕っぷしで従える華雨さん、ワイルドが過ぎる。狼の群れのボスか。
・逆膝枕…!!(震) なんか…、なんか、仲悪いと思ってた家猫同士が、ふと見たらくっつき合って寝てた、みたいな…! みたいな…!!(何)
・お互いに対して手が早いし口も悪いけど、平気で自分の急所をさらしたり、ぺったり寄り添ってみたり。雑に扱っていい喧嘩友達…というには近すぎる、近いんだけど目は合わない、不思議な距離感。
・ちょっと食われてみたい気もするけど眠いからまぁいいや、で、勝手に借りた男の膝でそのまま寝る。自由気ままか。狼と思いきや黒豹か。
・殺しても死ななそうな獣は、置いていかれる前にさっさと死にたい。
・死にかけた華雨を見舞う白雨。最後幼名で呼ぶのずるいわ。
・生きろって、いうのか。で、ぶわっとくる。
・「いつもそっぽばかり向きおってつまらん。少しはわたしを見よ」←誘い方たまらん好き。おまいう。
・獣の仔を花と呼んで愛した皇子。おまえがわたしを呼ぶから。
・「西都の花は、満開だった。」いつもいつも、いっぱいに乱れ咲く花の下を、東雲のいるところに向かって走っていく少女。だけどこの先は、競い合ってただひたすら遠くへと。けっこう血なまぐさい話なのに、みっしり咲き群れる花のイメージが強い。
・物足りないような満たされたような読後感が絶妙。一度きりであり、ほんの一瞬であり、それっきりであり。だけどそれで十分な。
・人対人の関係性が、どこを切り取ってもめちゃくちゃに滾る。小話:山梔子が地味にものすごく好き。