【長編】遠くの星 : 閑人書房

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【長編】遠くの星

2020年9月5日 

前世の記憶を持って生まれた少女の、初恋と自立の物語


作品名遠くの星
作者雨咲はな
文字数約27万6000字
所要時間約9時間10分
ジャンル恋愛(現代)
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レビュー

「君は、『奈津』の生まれ変わりだ。僕と奈津は、前世で結婚の約束をしてたんだ。きっと一緒になろうねと、誓い合ったんだ。――やっと、その約束を叶えられる」


昔から断片的な「前世の記憶」を夢に見てきた少女・夏凛。夢のことを打ち明けると、優しい年上の従兄は嬉しそうに微笑んだ。君がそれを思い出してくれるのを、ずっとずっと待っていた――、と。
けれど夏凛がやがて初めての恋をした相手は、前世で約束を交わした男ではなく、無愛想な同級生の男の子だった…。

前世の記憶を完全に思い出してしまえば、この恋は消えてなくなってしまうのかもしれない。そんな不安を抱えながらも、好きな人になんとか近づきたくて頑張る女の子。恋とともに育っていく思いに、少女はやがて殻を破り、自分の足で進み始める。それは救いか裏切りか――?

前世の因果に縛られた子どもたちの、自分を見つけ、もつれた想いを解くための物語。

キャラクターpickup
夏凛かりん
「でも、今の私は、夏凛なんだよ」
「ごめんね。私の顔がアンパンで出来てたら、蒼君に食べさせてあげられるんだけど」
「蒼君てさ、私のこと、小学生以下だと思ってるよね? 私だって出来るよ、一人旅くらい」
…ちょっと鈍感で抜けてる女子高生。想像力がたくましく、よく変な方向に思考を飛ばしがち。「奈津」という少女であった前世の記憶を持っている。
鷺宮さぎみや そう
「新人バイト風情が、時間きっちりに来るな。もっと前から来て、しっかり準備しろ」
「何があった、って聞くのは簡単だけど、それに答えるのが簡単じゃない場合もある、ってことくらいは知ってる」
「……なんか今、一瞬、猛烈にムカついた」
…夏凛と同じ高校に通う男子高生。本屋でアルバイトをしている。あまり周囲に関心がなく、いつも仏頂面。無愛想でマイペースきわまりない男の子。
空木うつぎ 知哉ともや
「今日、ナツがヒマだったら、遊びに行こうかなと思ってさ。最近、遊園地って行ってないなあーって、こぼしてただろ、この間」
「――あの時から、僕は『いつか本物の指輪をナツに買ってあげよう』と思ってたよ」
「そんなことは許さないよ、ナツ。僕以外の男を選ぶなんて、絶対に許さない」
…夏凛の母方の従兄。橘家の近所のアパートで一人暮らししている大学三年生。頭が良くて甘やかし上手なイケメン。夏凛とは前世で婚約者同士だった。
季久子きくこ
「獲物を見つけたら、素早く狩りに行かないと、他のやつに掠め取られるよ。これだ、と思ったら、前進あるのみ」
「ほら、あたしってさあ、小さい頃からすんごく可愛かったじゃない?」
「諦めたり逃げたりする必要なんてないの。目の前の壁なんか力ずくで叩き壊して突き進んで、男と未来を両手に掴みとるのよ、いい?」
…夏凛の幼馴染。学年のアイドル的存在で、可愛らしい容姿に反してかなり男前で気が強い性格。

・困ってる女の子に助けを求められて、一切動じることなく堂々とガン無視しようとする蒼君。どこをどう読んでも恋に落ちるようなシーンじゃなくて笑う。

・でも、多少の乙女フィルター乗ってる感はありつつ、夏凛ちゃんが蒼君のこと好きだなぁって思うのは何かすごく分かる…。

・トモ兄の、夏凛ちゃんを口説くって感じじゃなく、もう結婚するのは決定事項、ってスタンスで来るところ。誘惑するとか意思確認するとか、あって当然の手順を平気ですっ飛ばしてくるみたいな異様さがあるから、ひたすらに恐怖感がくる。

・蒼君と仲のいいお友達がうらやましくてギリギリする夏凛ちゃん、好き(笑)

・「大好き」が駄々洩れで、がんばって接点つくろうとするけどアプローチしまくるって感じでもなく、蒼君が友達といるときは話しかけれなかったりとか、ちょっと構われただけで超喜んだりとか、とにかく視界に入りたい、話しかける口実がほしい、っていうこのけなげさ。高校生男子がこれにほだされないのは無理、ぜったい無理。だってめちゃくちゃ可愛いもん。

・夏凛ちゃんの察しも悪いが、蒼君の言葉足らずも悪いと思うな!

・前世の記憶で「自分」が上書きされてしまうような不安感から、「蒼君に会いたい」に繋がるところ。前世に引きずられてるときのトモ兄に対して怯えがちな夏凛ちゃんが、蒼君に関することに触れられると怒りが先にくるところ。そこから少しずつちゃんと反発できるようになっていくところ。蒼君を好きになったことそのものが「奈津ではない夏凛」としての根っこに近い部分にあって、この恋が「夏凛」にとって本当に大事なものなんだなぁって感じがして好き。トモ兄にも奈津にも触れさせたくない侵させない。

・夏凛ちゃんが、蒼君への恋を通して「こういう自分でありたい、こう出来る自分でありたい」みたいなことを思って、少しずつ自分を形づくって大人になっていく感じ、いいなぁ。

・「普通の日常会話程度の、なんでもないようなことばっかり」を毎晩電話でしゃべったり、「景色見て、話を」するためだけに二人で出掛けるような関係を、付き合ってると言わないなら一体何だというんだ…(笑)

・蒼君よく笑うようになったなぁ。お友達としゃべってるときでもそうそう笑ったりしないっぽかったのに。

・だというのに、いまだに「デート『みたい』」とか「蒼君に好きな子がいたら」とか言ってる夏凛ちゃん…。めちゃくちゃ特別扱いされてんの、さすがにわかるでしょ! 「蒼君には、優しいところがちゃんとある」とかね、そうだけど、そこじゃないじゃん? 見えてなかったものが見えるようになったっていうより、出してなかったものを出すようになったんじゃん? 優しくしてもらえるようになったという事実にもっと注目しようよ!

・夏凛ちゃんが、朝ごはんのお味噌汁あっためるの自分でやるよって言うところ。朝ごはんないの? ってお母さんと喧嘩してた第1話と地味に対比になってて良い。

・ちゃんと話をしようとしてるのに、どうして聞いてくれないの分かってくれないの、って思うのは甘えだ。っていうところ、ああ本当にすごく大人になったなって感じがして好き。自分の気持ちをきちんと伝えて、わかってもらう努力をするだけじゃなくて、まず相手の気持ちを考えること、理解する努力をすることだって必要だよね、大事な人ならなおさら。

・幼かった頃から、人を(しかも好きな女を)殺す記憶をずっと見続けてきたら、そらちょっとおかしくもなる…。むしろ大分踏みとどまってる方なのは、ちゃんと知哉と夏凛として優しい関係を築けてきたからなんだろうな。

・怪我した手をそろ~っと隠す夏凛ちゃん。あ、これ怒られるやつや…って察した瞬間のわんこみたいで可愛い。

・電話で蒼君の声聞いて泣いちゃったり、蒼君が来てくれたら気が抜けてぶっ倒れたりするところ。蒼君ってあまり人に安心感を与えるタイプではないと思うんだけど、夏凛ちゃんは安心しちゃうんだなって。

・トモ兄の話題で「かなり露骨にイヤな顔」する蒼君…。蒼君とトモ兄は今後もずっと夏凛ちゃんの頭越しにピリピリチクチクやってそうだなぁ。

・何も考えてないマイペース大王だったのに、夏凛ちゃんの名前聞いただけで心配がよぎるような苦労性になっちゃって…(笑)

・期末試験にもクリスマスにも学校の始業日にも気づかない子が、ひとのこと鈍感とかいってる…。蒼君の場合は興味なさすぎてスルーしてそのまま忘れてる感じだけども。

・番外編しぬほどときめきましたご馳走さまです。



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