【中短編】ある貴族令嬢の五度目の正直
2020年5月12日
結婚運の悪い貴族令嬢と書物室で働く司書殿の、年の差ラブロマンス
作品名 | ある貴族令嬢の五度目の正直 |
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作者 | 藍野ナナカ(かずね) |
文字数 | 約8万8000字 |
所要時間 | 約2時間55分 |
ジャンル | 恋愛(異世界) |
作品リンク | 小説家になろう |
レビュー
「わからないということは、私とあの人は運命の相手ではなかったのかしら。私も恋というものをしてみたいのに、残念ね」
貴族領主デラウェス家の末娘・アデリアは、幼い頃から通算三度の婚約をしてきたが、そのどれもが同盟破棄や相手方の醜聞によって流れてしまっていた。四人目の婚約者となった若い騎士もひと月前に戦死したという報が届けられ、とことん結婚運に恵まれない令嬢は、領主館の書物室で顔なじみの司書殿を相手にため息をつく。
地方貴族の領主館の空気が濃密に描き出されていて、物語の世界に引き込まれる。
三人の優秀な兄たちに大切に守られて育った領主家の末娘は、ドライな結婚観とともに恋に対する淡い憧れと諦観を抱く、率直で飾らない気性のお嬢さん。そんな彼女が妙な成り行きから親しくなったのは、ボサボサの金髪で顔を隠した奇妙な風体の司書殿で、楽しげに書物室に通う令嬢の屈託のなさが微笑ましい。
恋を知らない十代の少女の繊細な心と、年の離れた二人が緩やかに距離を縮めていく過程が丁寧に描かれていて、じんわりと心があたたかくなる物語。