【短編】ラフマニノフの指先
2020年5月10日
ピアノを愛する少女とピアノに愛された少年の、交錯する刹那の物語
作品名 | ラフマニノフの指先 |
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作者 | 糸(水守糸子) |
文字数 | 約2万1000字 |
所要時間 | 約40分 |
ジャンル | 恋愛(現代) |
作品リンク | カクヨム 小説家になろう |
レビュー
ラフマニノフの指先は、選ばれた者だけが持っている。
音大付属の中高一貫校に通いながら才能の限界に突き当たって苦しむ少女が、定期演奏会でピアノ・デュオを組むことになったのは、三歳年下のピアノの神様に愛された少年だった。
嫉妬と焦燥、閉塞感と悲しみ、そして刹那の激しい情動。
うたうような詩的なリズムの文章で紡がれる、どこか鋭利なものを孕んだ透明な空気感がうつくしく、人生の岐路に立たされた十代の少年少女の痛切な想いが胸に迫る。
才能に焦がれながら、才能に苦しめられながら、それでも天から与えられるものに振り回されず、自分の人生を自分で選び取ろうとする二人の若いピアニストの姿が、とても眩しくて愛おしい。
瑞々しくもどこか不穏で、狂おしくも爽快な、心に響く物語。