【短編】No Reaction
2020年6月6日
透明人間の少年が滔々と自説を語る哲学的SFファンタジー
作品名 | No Reaction |
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作者 | 柞刈湯葉 |
文字数 | 約2万字 |
所要時間 | 約40分 |
ジャンル | SFファンタジー(現代FT) |
作品リンク | カクヨム |
書籍版 | ハヤカワ文庫JA(※公式ページ) |
レビュー
ぼくは透明人間だ。名前はまだない。
作用は受けども反作用を与えることは出来ず、観測されることのない存在である「少し賢い中学生」。生まれつき透明人間である「ぼく」は、誰にも存在を気づかれないまま「不透明人間」たちを観測して日々を過ごしている――。
自分を幽霊だと思っていたこともあるが、検証の結果、これは透明人間というべきものだという結論に達した「ぼく」の一人称で語られる、透明人間の物理学的実態とその生活について。丁寧につくりこまれた設定には実体感があり、なおかつ整然としてウィットに富んだ語り口は分かりやすくて、今このときも我々を観測する透明人間が存在しているのかもしれないと思わせる。
おもに「不透明人間」たちを観測することで日々を過ごしている透明人間の少年から見た、不透明人間心理や社会考察なども面白く、最後は少しどきりとさせられる。
透明人間の少年が滔々と自説を語る、秀逸な理系哲学ファンタジー。