【中長編】ブラックホールをふさいだ日、
2020年7月23日
友達未満な高校生たちが少しずつ距離を縮めていく瑞々しい青春グラフィティ
作品名 | ブラックホールをふさいだ日、 |
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作者 | 村崎千尋 |
文字数 | 約10万3000字 |
所要時間 | 約3時間25分 |
ジャンル | 恋愛(現代) |
作品リンク | 小説家になろう |
レビュー
「つらいことも悲しいことも、全部、この穴が吸い込んでくれるんです」
菅本雛子の兄・日向は、昔から可哀想な生き物を放っておけない子どもで、すぐに動物を拾ってくる癖があった。そんな兄があるとき拾ってきたのは、プールに落ちてびしょ濡れになった男の子。しかもよく見るとあちこちにピアスの穴が開いていて…!?
日向に引っ張られてちょくちょく菅本家にやって来るようになった稲倉君は、日向と同じ男子校に通う特待生で、女の子が苦手らしく女子と話すときはちょっとどもりがち。ちょっとお馬鹿であっけらかんとした気性の女子高生・雛子とは、顔を合わせるうちに口喧嘩をしたりするようになるけれど、ふたりはあくまでも「兄の後輩」と「先輩の妹」という関係性でしかなく…。
高校生活の空気感や、思春期特有の面白おかしさと憂鬱さ、友達未満の繋がりしかない相手に対するもどかしいような情が丁寧に描かれていて、心が引きこまれる。
不器用に手を伸ばし合う等身大の高校生たちの瑞々しい青春小説。
キャラクターpickup
菅本 雛子
「非常事態に何ホモホモしてんのよ」
「なんで日向そんな私のこと稲倉くんに喋ってんの!」
「稲倉くんあの人たちに言われっぱなしだし、日向にも嘘つくし、黙ってピアス開けるし、なんなの。一人で傷ついちゃって、悲劇のヒーローぶってるの?」
…蓮野高校一年生。素直であっけらかんとした、ちょっとお馬鹿な女の子。
稲倉 想太
「俺、雛子さんがそういう方だとは思ってませんでした……」
「えっと、あのっ、今日、おにぎりなんで、居間にあるんで、えっとその、お腹すいてたら、食べてください……」
「結局女の子ってそうですよね、自分とは関係ないことに首突っ込んできて。彼氏だからとか兄だからとか、自分の大切な人ばっかり庇おうとして、そのためには何を言ってもいい、誰を傷つけてもいいみたいな、そんな……」
…光徳学院高等部一年生。中高一貫の有名進学校に、高等部から外部受験で、しかも特待生として入っている秀才。女の子が苦手で隠し事が多い。
菅本 日向
「拾ってきちゃったんだから仕方ないだろ」
「もしまた殴られたら俺のとこにおいで。三年C組だから」
「にくっ、にーくっ、ベーコン、たまごっ、タンパク質ぅ」
…光徳学院高等部三年生。明るくて面倒見がよく、人望の厚い人気者。