【中短編】最終列車 : 閑人書房

おすすめネット小説紹介ブログ
初めてお越しの方は【 ご案内 】をご確認ください。

【中短編】最終列車

2020年9月17日 

失恋したてのOLとマイペースな駅員さんの、明日へと向かう物語


作品名最終列車
作者雨咲はな
文字数約3万7000字
所要時間約1時間15分
ジャンル恋愛(現代)
作品リンク小説家になろう

レビュー

「ちょっとだけ、疲れちゃったんですね。そんな時は、温かいココアを飲むといいです」


二年近く付き合った恋人から突然別れを切り出された二十七歳のOL・凪子。妊娠したという浮気相手は、彼と付き合っていることを社内で唯一打ち明けていた同期の友人だった。
二人の結婚式が終わり、駅のホームでぼんやりと座っていた凪子は、人のよさそうな笑顔の駅員さんに声をかけられる。にこにことマイペースにお喋りする男に面食らった彼女だったが…。

消耗しきって動けない凪子さんにココアを差し出してくれた駅員の仁科さんは、のほほんとしてとぼけた印象ながら、ちょっと底が見えないところのある不思議なひと。
大事な人たちに裏切られて、腹が立って悲しくて、どこまでも落ち込んでいってしまいそうなときに、あたたかいものに触れて心が緩んだり、思わず笑わされてしまったり。徐々に癒されて前向きになっていく心情が丁寧に描かれていて、清々しくあたたかな読み心地。

疲れた心を休め、しっかり整備して、再び走り出すための物語。

・いきなりド修羅場…。真っ向から喧嘩しにきてる元友人はともかく、元カレものすっごいイライラする…(笑)

・結婚式の間中、笑顔で押し通した凪子さんが、家に帰るまではもたなくてホテルのトイレで泣くところ、めちゃめちゃしんどい。そして拍手したい。毅然として美しいひと。

・この駅員さん、めっちゃしゃべるな!? …ていうか、読めない人だなぁ…にこやかにすっとぼけたこと言いながら、全然動じない感じ…。

・堂々とナンパ宣言する仁科さん。すごい変な人なのに、妙に如才ないというか、自分のペースに人を巻き込むのがうまい人だ…。

・わざと変なこと言ってたわけじゃなく素で変なこと言う人だった。仁科さんのキャラがツボに入ってる凪子さん、かわいい。

・大事だった人たちを憎まずにいられなくて、自己嫌悪の悪循環に入ってしまっているときに、悲しかったですね、かっこいいですよ、って言ってもらえるの、じわっとくる。

・さらっとストーカー行為を対象者本人に承認させたうえに、連絡先教えるしかない流れにした…だと…。なにこの手際。

・仁科さんは、なんというか、別に腹黒っぽさは感じないけど、曲者っぽさがすごいな…。マイペースなように見えてめちゃくちゃ空気読んでくるとことか、するっと相手の懐に入ってる感じとか、そのくせ変なことばっか喋って相手を困惑させるとことか、………これ、天然なの…?(困惑) 空気読んでるっていうよりか、人との間合いをはかるのが異様に上手いのかなぁ。

・「元カレと不倫して復讐してやろうなんていう考えはバカバカしい」って思えるようになっていることで、ああ自分はちゃんと立ち直れているんだって認識がスッと入ってくる。このシーン好きだなぁ。別に傷つくことを怖がらなくてもいいんだって吹っ切って、視界が一気に前に向かって開ける感じ、気持ちいい。ついでに、さっきまで元カレむかつくとか思ってたのも一気にどうでもよくなる(笑)

・仁科さんは、マイペースというか、何をしてても自分のスタンスが安定してる感じが、めちゃくちゃしたたかそうに見えるんだよなぁ。………………で、元カレにお灸をすえたその技は何なの…?(震) したたかそうっていうか普通に強キャラ(物理)だった…!

・「電車の女神さま」とかいうパワーワード………仁科さんの電車愛を理解したうえで、ちゃんと最上の褒め言葉として受け取ってくれる凪子さん、まじ女神。プロポーズもそのうち解読できるようになるんだろうか(笑)



ブログ内検索