【長編】散りきらない愛に抱かれて ※R-18 : 閑人書房

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【長編】散りきらない愛に抱かれて ※R-18

2020年10月11日 

傲慢で峻烈な伯爵と無垢で愛らしい美少女のすれ違いラブロマンス


作品名散りきらない愛に抱かれて
作者泉野ジュール
文字数約18万字
所要時間約6時間
ジャンル恋愛(ヒストリカル)
作品リンクムーンライトノベルズ

レビュー

この手紙は、わたしの死後ちょうど三ヶ月後に君に届くよう手配している。三ヶ月。君は存分にオフェーリアを傷つけただろう。これが私の叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに。


二年半ぶりに戦場から戻ったウィンドハースト伯爵ゴードンは、死の床に瀕した親友から、若く美しい妻との不貞を告白される。傲慢で苛烈な男が唯一愛し慈しんだ、朗らかで愛らしい幼な妻のオフェーリア―――深い愛は激情へと変わり、最愛の妻へと酷烈な仕打ちを強いたゴードンが、やがて親友の呪われた企みを知ったときには、傷つききった妻は彼の前から姿を消していた…。

情熱的でロマンチックな身分差恋愛の顛末と、互いを諦めきれずにもがいては傷を増やしていく二人の苦悩が、情感豊かに描き出されていて胸を抉る。
絶望の底を知った伯爵は、激情に任せて深く傷つけた最愛の女性を取り戻すことが出来るのか――?

ドラマティックで濃厚な情緒あふれるヒストリカルラブロマンス。

キャラクターpickup
ゴードン・ランチェスター(ウィンドハースト伯爵)
「オフェーリアは今もわたしの妻だ。わたしの息の根が止まるまで、永遠に」
「くそ、神よ……わけ知り顔の執事にご慈悲があらんことを。首を絞めてやりたい気分だ」
「帰ってこよう。約束する。たとえ足が一本になろうとも、千の欠片になろうとも、君のもとに帰ってくる」
…猛々しい迫力のある美丈夫。皮肉っぽく傲慢で気短な男だが、情熱的で愛情深い。
オフェーリア
「父はいつも、わたしの好奇心は猫にも勝ると言っています」
「あなたの心の傷が癒えて、いつか……生涯をともにしたいと思うような、誠実な女性に出会えることを願います」
「……そんなこと、知りません。わたしは文字が読めないから、その書類だって間違って捨ててしまうかもしれないわ。無事に帰ってこなかったら、そんなのひとつも思い通りになんてならないんだから」
…好奇心旺盛で純真無垢な美少女。機知に富んで愛らしく、朗らかで懐が深い。

・ふざけて木に向かって話しかける無邪気な少女と、それに対して返事をする見知らぬ男。髪にからんだ赤い葉をとる出会いのシーン、めちゃめちゃロマンチックでドキドキする。

・オフェーリアさん、可愛いなぁ。好奇心旺盛で朗らかな美少女。

・それをがっつり視姦しまくる閣下…視線だけでこのエロさってどういうことなの…。

・「たった一日だけの出会いでこれなら、もっと長く彼の近くにいたら……オフェーリアは破滅する。別れに耐えられなくなる。だから、忘れなくちゃ。」破滅のにおいしかしない初恋相手が強烈すぎる。諦めをつけることはできたとしても、こんな圧倒的存在感の男を忘れるのは難しい。

・結婚の意思はないが恋人として家に来て欲しいという閣下相手に賭けに出て、譲歩を引き出すオフェーリアさん。初恋に胸を上ずらせながら、恋心に流されまいと必死になった挙句の落としどころに、純真さと良識があらわれてる感じがして好感が持てる。

・「オフェーリアは待っているのに。心が押しつぶされそうなほど、彼に会いたいのに。苦しいのに。恋しいのに。」オフェーリアさんも閣下に夢中だけど、閣下のほうがその比じゃないレベルで夢中な感じが、上被せするように行動で示されてくるところ。激しいロマンスにときめく。

・主を貶す不遜で皮肉っぽい執事に対して、これは突っ込むべきなのかしら…って困惑するオフェーリアさん。チョーサーさん好き(笑)

・色々拗らせてる伯爵閣下と、愛をもってすべてを受け入れようとするオフェーリアさん。救いであり赦しであり癒しであり。人間不信ぎみっぽいのにこの女性に一目で惹かれた閣下の嗅覚すごいな。人生の幸運がここに全振りされてる感がある。

・笑っただけで使用人を顔面蒼白にさせる閣下…。「慣れた方がいいぞ、トム。これが新しいゴードン様のようだからな」チョーサーさん本当好き(笑)

・無事に帰って来て早く文字を教えてください、さもないと遺産の書類なんてみんな燃やしちゃいますよ、って閣下を脅迫するオフェーリアさん、愛おしい。

・閣下が心を許している人間はただでさえ少なそうなのに、この期に及んで幼い頃からの親友による痛恨の一打…。つくづく人間関係に恵まれないお方だなぁ。

・「いつかまた春が来ると、信じていいのだろうか。この愛は――ふたりは――散りきったわけではないと、信じても……。」「わたしはお前を許せるだろうか? お前は、わたしを、許せるだろうか?」絶望的に隔てられたふたりが、それぞれにもがくようにして僅かな希望を追って、その都度お互いに傷を増やしていく展開がしんどい。

・小さな海辺の町にひっそりと身を寄せていた妻を見つけ出す閣下。怒りも傲慢さも見せずにただただ悲しげにしていると、傷つきやすい繊細なところが前面に出てくるなぁ。もうオフェーリアさんいないと生きていけなさそうというか、これは絆される。

・自業自得で怯えられて、自分のせいで泣いている最愛の妻に近づくことも出来ない閣下がめちゃめちゃ苦しそうで胸が痛くなる。

・「決して触れないと約束するから、君に時間のある時に文字を教えてあげたい。これはどうだろう?」オフェーリアさんがずーっと大切に抱え続けてきた約束が、閣下の方から頼み込むような形でようやく果たされる。慎重に距離を保ったまま、ぎこちなく互いの苦しみに寄り添おうとする夫婦。切ない痛みの付きまとう穏やかな時間が、じんわりと心に沁みる。

・エピローグ泣いてしまう。何年たっても何度でもオフェーリアさんを口説いている閣下。「愛しているよ、オフェーリア。今から少し、昔話をしてあげよう……」



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