【長編】どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。(連作) : 閑人書房

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【長編】どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。(連作)

2022年1月2日 

ずぼらな引きこもり魔女と尊大で生真面目な騎士様のもだもだラブコメディ


作品名どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。
第一部
文字数約11万6000字
所要時間約3時間50分

作品名どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。
第二部
文字数約12万8000字
所要時間約4時間15分

作者六つ花えいこ
ジャンルラブコメ(異世界FT)
作品リンクカクヨム
小説家になろう
書籍版Мノベルス(※公式ページ)

レビュー

「次にため息をつく場合は、是非教えてください。美しい男のため息は、薬の材料になりますから」「絶対に言うものか!」


人々に恐れられながら、森の中の湖の小島でひっそりと暮らしている魔女のロゼ。あるとき、人目を忍んで魔女の庵を訪ねてきたのは美しく高貴な騎士様で――四年前、ロゼが街でひそかに一目惚れした相手だった! 思わぬ訪問者に動揺する彼女に騎士が告げた依頼は、なんと「惚れ薬を作って欲しい」というもので…!?

長年片想いをしている相手から惚れ薬を依頼されてしまった魔女が、ちょっぴりやさぐれたりしつつも、ささやかな交流に孤独な心を解かれていく姿が、切なくもあたたかく胸に迫ってくる。一方、得体の知れない魔女のただの少女のような素顔を知ってしまい、世話を焼いているうちにどんどん深みにはまっていく騎士の想いの行方は――?

生きる世界の違う騎士と魔女が、人として向き合っていこうとする恋物語。

キャラクターpickup
ロゼ
「いえ、眩しくて……。お客さん、顔がいいから」
「魔女はお客様を――この庵に訪れる方を詮索したり、他言したり致しません。魔女の秘薬を頼る方は、自身ではどうにもならない、切実な願いをお持ちですから」
「……おたくのご主人を呪う薬とか、必要ですか?」
…『湖の善き魔女』。先代の魔女だった祖母を亡くしてから、湖の庵にひとりで住んでいる。ずぼらで生活力の低い引きこもり。
ハリージュ・アズム
「わかった、待て。すまなかった。本当に。魔女殿が見かけよりも随分と動転していることは、よくわかった」
「偉大でも魔女でも関係ない。人に泥をぶつけるのは、いけないことだ」
「あんたは、薄情だと言われたことはないか……?」
…伯爵家の三男で、王宮に勤める騎士。ナチュラルに上から目線なお貴族様。高潔で生真面目なイケメン。

【第一部】

・森の中の湖の小島、簡単な畑と小さな庵、魔女の大釜が鎮座する狭い室内。雑然として怪しげな感じ、いかにもな雰囲気で素敵…なんだけど、通常イメージする「魔女の庵」よりも散らかりレベルが上っぽい感じがする。薬草や薬包が本と本の隙間から零れ落ちるのはおかしかないですか(笑)

・主食が生レタスとか、ウサギさんか? 調薬はするくせに調理はしないの、ずぼらっぷりが如実に表れているな。日常生活における無頓着さが留まるところを知らない。

・「この気持ちをなんと表現するのか、ロゼにはわからない。」「あぁ、これは『喜び』だ。」「好きな人が自分を思ってやってくれた行動が、たまらなく嬉しいのだ。」他人の行動によって自分の心が動かされること自体にそもそも免疫がないのかな。胸が苦しいのが先に来て、ちょっと遅れて自分は嬉しいのか、って認識する感じが、不器用で愛おしい。

・「タルト・タタンというらしい」ハリージュ様も甘味にはあまり詳しくない感。普段あまり口にしないものを、わざわざロゼさんのために選んできているんだな。「なんて素敵な響きだろうか。食べる前からもう美味しい。」そして完全に餌付けされてる魔女さん、かわいい。

・「この人を完璧に騙すことは、もう無理なのだと思い出す。」「ロゼは今、途方もなく幸せだなと思った。」人に交らずに生きてきた少女が、身を守るための鎧を失った状態を「幸せ」と感じていることに、胸がつまる。ただ当然の習慣として人を遠ざけて暮らしているだけで、別に選択して一人でいるわけではないんだよな。

・「誰もが、ロゼをもが、自分を人として扱わないのに――ハリージュは何のてらいもなく、魔女を人として扱ってくれる。」「ロゼはこの言葉さえあれば、この先ずっと一人で生きていけるだろうと、心から思った。」

・常に一人で生きていくことを前提にしているロゼさんが、人と人が距離を詰める過程の、かなり手前のところで防衛線を引いている感じがもどかしい。

・「どうぞ、お納めください――惚れ薬です」「……いや、早くないか?」目的は薬そのものじゃなく時間稼ぎの口実だからなぁ。前回の惚れ薬生成時と立場が逆転している…(笑)「あんたは、薄情だと言われたことはないか……?」ハリージュ様がんばれ、超がんばれ。

・「この両手は魔法をかけることは出来ても、部屋を片付けることはできないのだ。だって魔女だから。」とか、「衣替えの時期は大体何処の家もこんなもんだ。」とか、いちいち主語を大きくして言い訳する駄目っぷり、本当に駄目すぎるな(笑)

・「四年前、ハリージュの放った何気ない一言を聞いてから、ロゼは善良な魔女であろうと心がけている。」嘘のつけない魔女さんが序章の段階から『善き魔女』を名乗っていることとハリージュ様との因果関係が良き。


【第二部】

・「――私は真実、彼のそばに“魔女”のままでいていいのか。」ナチュラル上から目線で、人に合わせてもらって当然みたいな生き方してきてそうなハリージュ様が、ロゼさんに一般人のTPOを求める気がないのが、ものすごく大事にしようとしている感じがして好き。

・「卵が焼ける匂い、慌ただしく動く足音、食器の重なる音。」「その全てが、珍しく、懐かしく、くすぐったい。素知らぬ顔でロゼの柔らかい場所を、そっと撫でていく。」ひとりでいる時には特に人恋しさとか感じてなかった風のロゼさんが、こうやってふとした瞬間に見せる人への愛着が愛しい。

・鶏にこっそりおやつをあげたがったり、『お菓子を持っていても、知らない人にはついて行ってはならない』とか注意されたり、なんというか社会性が幼児レベル感…(笑)

・「結婚を……こういう話を、貴方としていることがもう――私たちにとっての結婚であると、私は、そう思いました」人間社会における制度としてではなく、人対人の関係性として「結婚」というものを理解しようとしている感じが、朴訥で誠実で、ちょっとじーんとする。「私は人のことも知らず、世のことも知りませんが、貴方のことを知らないままでいたいとは思いません」「歩く道のりが違っても、向かう先が同じなら、きっとそれが『結婚』なのだと……そう、思います」

・「――貴方は、私に魔法をかけましたか?」魔法でもかけられたのかと魔女に思わせる威力。自分のしたことに自分でびっくりして泣いてるの可愛い。「愛とは、なんと恐ろしいものか。」

・「誰に惚れるか、楽しみですね。可愛らしい女の子であることを、私も祈るばかりです」魔女相手に横暴したんだから、これくらいの仕返しされても仕方ないね! だって魔女様だから、王子様とか関係ないから。やられっぱなしで済ませるはずがない魔女様は大変素敵なんですが、ヤシュム君とは今後もずっと仲悪そうですね。



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