【短編】わたしの可愛い婚約者
大らかなお嬢さんと鉄壁仕事人間の、「可愛い」からはじまるラブコメディ
| 作品名 | わたしの可愛い婚約者 |
|---|---|
| 作者 | 山吹ミチル |
| 文字数 | 約2万5000字 |
| 所要時間 | 約50分 |
| ジャンル | ラブコメ（異世界ＦＴ） |
| 作品リンク | 小説家になろう |
「ほら、怖くないから、こっちおいで。ぎゅーってしよう！」「ふざけんなー！」
リニの婚約者は性格が悪い。今日も今日とて、少しでも友好的な関係を築こうと会いに行っては、時間の無駄だと邪険に追い払われる日々。ちっとも歩み寄る気のない男に怒りを募らせるリニだったが、ある日、呼び出しに応じて訪ねて行った屋敷にいた彼は、なにやら可愛らしい姿になっていて…!?
少しでも明るい将来のため、めげずに関係改善を目指すお嬢さんと、そんなものは一切眼中にない仕事の鬼。家庭を持つ前から家庭を顧みない男を突然襲った椿事の顛末が、微笑ましくコミカルな筆致で描かれていて、ちょっと気の毒ながら思わずくすりと笑ってしまう。
前向きで可愛いもの好きなお嬢さんと一緒に、可愛さの対極にいるような男の可愛げを是非発見してほしい。
仲の悪い婚約者同士が、とある災難をきっかけにお互いを見つめなおすラブコメディ。
【本編】
・「僕にとっては利点を感じないな。もっと関係を改善しなくてはいけない相手が他にたくさんいる」うーん、これは殴りたい(笑)
・これだけ気をまわして歩み寄りの努力をしてるのに無下に扱われ続けて、帰ってからクッションに八つ当たりしてる程度なら、寛大すぎるほど寛大じゃないかな！
・小っちゃいクラースさん、でっかい方とのギャップで、必要以上に可愛く見えるな。クラースさん（大）の鉄対応に鍛えられまくったリニさんを迎え撃つには、ＡＴフィールドの強度が全然足りていないと思われる。
・「積年の恨みを晴らすため」に実行する「嫌がらせ」の内容が可愛くてなごむ。平和か。
・八歳児を構い倒して怒鳴られたり怒鳴られたり怒鳴られたりする「充実した日々」…リニさんが活き活きしすぎてて笑う。
・病床の父親にも仕事で必要な時以外来るなって言われてたくらいなら、そら「私的な交流全般＝無駄な時間」みたいな価値観にもなるかもしれないなぁ。実際、ずっと多忙でそれどころではなかったのだろうし。状況的には余裕が出来たとしても、それまでバッサリ視界の外に追いやっていたものに対するスタンスを変えようという気になるには、何かきっかけがないと難しい。
・「かっこいいね」「大丈夫。クラースはちゃんと守ったよ」邪険にされて腹を立てても、仕事人間なクラースさんのそういう面もしっかり認めているのだな。事実として「性格が悪い」とは思ってるけどな。
・「ちゃんとあの子と向き合うんだよ。そうすればあの子はきっと、お前の一番の味方になってくれるから」クラースさんがリニさんにとって相性の良い伴侶かどうかはさておき、リニさんがクラースさんにとって相性の良い伴侶であることは疑いの余地なしって感じがするなぁ。リニさんじゃなかったらとっくに見限られてそうだし。
・「もしそうであったなら、彼がいかに可愛いか、十分ほど訥々と語ってやろう」もはや意趣返しも嫌がらせもそれ一択なんですね(笑)
・「クラースは怒ったような悔しそうな顔で、何かを言いかけてやめる。」プレゼントをしてくれるとか、一緒に出掛けることを楽しんでくれるとか、そういう当たり前のことを微塵も期待していないリニさんのリアクションで、「邪険にしてた」とか言われたのがじわじわ実感を伴って効いてきてる感。好感を持ち始めている相手に、嫌味でもなく当然のようにこんなスタンスでいられたら、憶えはなくても不甲斐ないような気持ちになってしまうな。
・「呪いが解けたのはよかったけど、それは本当によかったんだけど、でも、あの可愛いクラースがいなくなってしまうなんて！」ほんまそれだけど言っちゃ駄目なやつ(笑)
・「クラース、可愛いー!!」「はぁぁー!?」可愛いとか思った方が負けだと思ってたけど、どう見てもクラースさんのが負けてる案件。
・可愛いは正義。
【その後】
・「どうしたの、クラース。おじ様に怒られたりしたの？ それとも、もしかして呪いの後遺症があるの？」「クラースって、わたしと結婚する気あるの？」「楽しいわよ。クラースがちゃんとわたしと話をしてくれるもの」すがすがしいほどの期待値の低さに笑うしかない。クラースさんがんばれ超がんばれ。
・デート中ずっと、他意のない素のリアクションのコンボでダメージを与えてくる婚約者。自業自得なだけに、なおのこと気の毒すぎてもう…。でももうしばらく苦労しといて欲しい…(笑)
・可哀想なものって可愛いんだなって思った。