【短編】シレネ

偽りの名を持つある女についての回顧譚


作品名シレネ
作者葉山郁
文字数約1万8000字
所要時間約35分
ジャンル現代欧米風/恋愛
作品リンク氷の花束(※トップページ)

レビュー

シレネを覚えているかと言われれば、僕は迷わずイエスと答える。けれどシレネは本当にいたのかと言われれば、僕はおそらく即答できないだろう。


アルバイトで学費を稼ぎながら大学に通う身寄りのない苦学生・ユージンに、やたらとちょっかいをかけてくる煩わしい女。いつ見ても違う男を連れているそいつは、男の数だけ違う名前を持っているらしかった。彼女がユージンに名乗った名は、シレネ。花言葉は、“偽りの愛”――。

息をするように嘘をつく、身勝手でいい加減で気まぐれで、そのくせ無邪気で、どんなに邪険に扱ってもめげないどころか面白がってちょっかいをかけてくる傍迷惑な女。本当のことなど何ひとつ口にしない、年齢も境遇もどこから来たのかもまったく不明の、偽りだけで固められた人間。
これはそんな、腹立たしくも鮮烈で、忘れ得ぬある女についての話。

元からどこにも存在しないものを喪ってしまったような、言いようのない痛みと切なさを残す恋愛短編。


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