【短編】私の好きな人(連作) : 閑人書房

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【短編】私の好きな人(連作)

2020年6月14日 

夏が嫌いで夏を待って夏だけ頑張る少年と、ひたむきで頑なな少女が、はじめての恋を完走する話


作品名私の好きな人
文字数約1万4000字
所要時間約30分

作品名蝉が抱く夏
文字数約1万1000字
所要時間約20分

作者葉山郁
ジャンル恋愛(現代)
作品リンク氷の花束(※トップページ)

レビュー

「終わらせられるのは嫌だろ。強制終了なんか冗談じゃない」


夏休みになると田舎の叔母の家でともに過ごす、ふてぶてしくて大人げなくて意地汚い「私の好きな人」。一緒にだらだらして、夏祭りに行って、最終日にはババ抜きで勝ったほうの宿題だけを二人がかりでやっつけて。―――だけどもうすぐ終わりが来ると、二人ともが知っていた。

田舎で病気療養してる中学生の少年と、夏休みのあいだだけ彼のところで過ごす少女の話。
普段はサボり魔でろくに学校も行かずにじっとしてるけど、夏休みの間だけは無理にたくさん食べて後から吐いたり、普通の顔して炎天下に外出してぶっ倒れそうになったりする、優しくて意地っ張りな男の子。そういう努力をうっすら知っていて、精一杯何も気づかないような顔をしている、頑なで真っ直ぐな女の子。それぞれが懸命に大切なものを守りながら迫りくるものと向き合っている姿に胸が苦しくなる。

どうしようもなく痛々しいけれど、泣きたいくらいに清々しい、ひとつの恋の結末。


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