【長編】じゃがいもの花 : 閑人書房

おすすめネット小説紹介ブログ
初めてお越しの方は【 ご案内 】をご確認ください。

【長編】じゃがいもの花

2020年6月14日 

アイルランド独立運動をモチーフにした異世界戦記譚


作品名じゃがいもの花
作者葉山郁
文字数約41万7000字
所要時間約13時間55分
ジャンル架空戦記(異世界)
作品リンク氷の花束(※トップページ)

レビュー

「帝国は、エーレには勝てないんだ。あの花が咲くかぎり。長雨を浴びても、ひどい日照りでも、あれは枯れない。――焦土の中からでも、新しい芽が出る。あの花に、人間は勝てないんだよ」


緑したたる小さな島・エーレと、その傍らに浮かぶ傲慢な支配者・帝国。かつてエーレに翻った反旗は、徹底的な虐殺と蹂躙をもって〈血道クレア〉と呼ばれた帝国軍人によって叩き潰された。
あれから数十年、一方的な搾取を続ける帝国からの解放を掲げて再び蜂起したエーレを率いるのは、ぼんやりとした素朴な農夫。対してその討伐任務を命じられたのは、〈血道クレア〉の血を引く、どこかとぼけた帝国軍人だった。
ふたりの悪魔が対峙するとき、傲慢な無理解と捻れた怨嗟を積み重ねてきた二つの島国の間にまたひとつ、新たな悲劇の歴史が紡がれる――。

一面のじゃがいも畑が広がる緑の島・エーレをめぐる解放軍と帝国軍の攻防を描く、血沸き肉躍る戦記物でありながら、父祖の代から続く恩讐の軛に繋がれた子どもたちの怒りと悲しみ、焦がれるような憧憬と未来に見る美しい夢が丁寧に描き出された、心揺さぶる感動作。

どんなときも頭をもたげる不屈の白い花に見果てぬ夢を見ていた恩讐の子どもたちの物語。

キャラクターpickup
<帝国サイド>

ニール・フィッツギルバード・クレア
「ファーガス大将は本国で英雄になった。その向こう側の国で、何になったかは誰も指摘しない」
「馬鹿げた言ですが、僕がエーレの指揮官なら帝国を破ることができます」
「僕は自分が正しいと思って動いたことなんか、一度もないよ」
…階級はそう高くないながら、戦略眼を買われて第二次エーレ反乱討伐総司令官に任じられた帝国軍人。かつてエーレに虐殺の限りを尽くして反乱鎮圧を成し遂げ、「血道クレア」と呼ばれた帝国軍人ファーガス・フィッツギルバード・クレアの孫。情緒が薄く覇気に欠け、いまいち掴みどころのない地味な男。
フィオナ・ティップトフト
「あなたの婚約者、フィオナ・ティップトフトです!」
「ニールさまはちょっと心配になります」
「馬車の陰でしたら、お別れのベーゼをしてもかまいませんことよ。婚約者ですもの」
…ニールの婚約者(仮)。任務でエーレに行って留守にしている間に義父によって勝手に整えられていた婚約のお相手で、ほがらかで押しが強く、奔放な少女。
シーマス・セシル
「だめです! 女性を悲しませる命令は上官であろうと聞けません!」
「愛は全てではないが、この世の多くの問題は愛で解決できる」
「過去は過去ではないですか。今までの苦しみでもういいではないですか。過去を根拠に未来を不幸にしてはなりません」
…ニールが総司令官に任じられるにあたって副官としてつけられた帝国軍人。色々駄目な上官に遠慮なく駄目出しをする、おおらかで面倒見の良い男。
リチャード・グリフィス・コーク
「離れていた方がいい、ということもあるのだろう。距離をとって、お互いが傷つかないのなら」
「その言葉、二度と口にするな、ウォルター!」
「彼に伝えてくれ。見事な戦いだった。我が名に誓って汚名はいずれ返上させてもらう。刻まれたこの地において」
…第一次エーレ反乱討伐総司令官を務めた帝国軍人。現王の従弟にあたり、継承権第四位の王族殿下。軍人としてはとりわけ秀でているわけではないが、下官の声にもよく耳を傾ける、高潔で気さくなおかた。

<エーレサイド>

フェイリム・アルマリク
「ジャガイモを植える、エーレ中に」
「長老たちの支援なしに戦うのもできなくはない。けれどないよりあった方がいい」
「違う色の花が、あってもよかった。帝国とエーレが、共存してもよかった」
…エーレ解放軍の総大将。全体的に色素が薄く、茫洋とした目の素朴な農夫。「無私、無欲、無償」と讃えられ、仲間から請われるままにエーレ解放の絵図を描き戦略を打ち立てる鬼才だが、敵味方問わず誰かの感情や人道に配慮するということが無いため、しばしば悪魔的な非人間性をあらわにする。
ヒュー・ド・レイシー
「賊はお前たちだよ。何十年も前から、な」
「証明したぞ、ミストレス。お前が最高の女だ」
「敵と馴れ合うのは好かない。尊敬だとか好敵手だとか互いに部下が死んだ後、んなこと言っている司令官がいたらそのねぼけた頭をぶんなぐってやるよ。もっとまじめに殺し合いをしろよってな」
…エーレ解放軍の海軍大将。浅黒く精悍な顔つきをした船乗り。粗野で荒っぽく、研ぎ澄まされた危険な雰囲気を纏うが、解放軍の首魁陣の中では一番気さく。美しい小さな白い帆船・ミストレスを熱烈に愛し、その恋人を標榜している。
シュレーヴァ・フィッツジェラルド
「敵にもうちに負けぬ腑抜けがいるらしい」
「いい心がけだ。食いちぎってやりたくなる」
「エーレの牙は、貴様が受けろクレア!」
…エーレ解放軍の騎馬大将。飢えた獣のようにいつも怒り狂っている凄絶な美貌の貴公子。苛烈で好戦的、怒り以外の感情表現を知らない血に飢えた狂犬のような男で、大将でありながら先陣を切って敵に突っ込んでいく。
マーベル
「傑作よ! ふかしじゃがいもに、マッシュポテトかけたの!」
「エーレの祝福を」
「同じ夢を見ようよ、フェイリム」
…エーレ解放軍の首魁陣らが大切に守っている幼い少女。素直で屈託のない子ども。


ブログ内検索