【短編】陸空猫 : 閑人書房

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【短編】陸空猫

2020年9月23日 

ピアノ教室に住む小っちゃな猫と大きな猫のちょっと不思議な日々


作品名陸空猫
作者古宮九時(藤村由紀)
文字数約2万6000字
所要時間約50分
ジャンルコメディ(現代FT)
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レビュー

「わたしは広い世界に旅立つ!」「やめておいた方がいいよ。君、前回で懲りなかったの?」


ピアノ教室の先生をしている葉子さんのおうちで一緒に暮らしている、好奇心旺盛なお嬢さん猫と、いつもローテンションな巨大猫。冒険を求めて脱走しては「世界の切れ目」に迷い込んでしまう小っちゃな暴君は、今日も今日とてため息をつきつつ迎えにやって来た保護者猫にくわえられて、文句を言いつつ帰路につく。

尊大で間抜けで自由気ままなアビシニアンのソラちゃんと、賢くて淡白で面倒見の良いメインクーンのリク君。冒険に行った先々で遭遇する熱いヒーロードラマや壮大なファンタジー、そして微妙な恋模様………に一切興味のないソラちゃんが、リク君に回収されておいしいご飯と葉子さんの待つおうちへと帰る、平穏で気ままな日々の物語。

愛くるしくコミカルな語り口で描かれる二匹の日常に思わず笑顔がこぼれる、癒し度100%のハートフルコメディ。

・ああこの愛くるしい一方でナチュラルに尊大で気ままなところ…まさに猫様ってかんじ。

・突然のヒーロードラマ…時給六百五十円の雇われヒーロー・斉藤と、謎の怪人。砂漠って、砂場とかグラウンドとかのことじゃなくて本当に砂漠なのか。まさかの異世界転移。

・やれやれってため息つきながら迎えに来る保護者猫と、首の後ろを咥えられてにゃごにゃご文句言いながら回収されるお嬢さん猫…。なんだこの二匹かわいすぎか?

・「…………あー、悪影響」←世界セイフクとか言い出した小っちゃな暴君に対する保護者のこの反応、めちゃめちゃ好き。

・長毛種を猫と認識してなくて「毛玉」よばわりしてたり、田んぼや畑や水路を「ジャングルや大河や沼や丘陵地帯」と呼んでいるソラちゃん。自分の世界で自由に生きてる感じ、好き。

・ソラちゃんのちょっと間抜けでアホな子なところ、身もだえするほど可愛い。

・リク君の安心感…。ソラちゃんのしっぽにちょっとじゃれながら「毎回迎えにこさせないでほしいな」って苦情言ったりとか、そのギャップはずるいでしょう…!

・この、なんだかんだ言いつつ甘やかしてる感じと、適度に雑な身内の距離感、好きすぎて震える。

・タ、タイツマントー!! 斉藤を仲間に引き入れたがっていたのは友情ゆえだったのかー!? 熱いドラマの予感。しかし一切興味がないソラちゃん。

・仔猫のころはリク君にべったりくっついて離れなかったソラちゃん、可愛すぎかな?

・かつて世界を支配していた猫様。なんだその世界は最高か? しかし壮大なファンタジー史の予感にもやっぱり一切興味がないソラちゃん。

・おお、マッチョ斉藤にフラグが…。そして安定の、一切興味がない(っていうか気づいてすらいない)ソラちゃん。

・なお、リク君はソラちゃんがスルーしまくってるドラマを全て正確に把握したうえでスルーしているもよう。旧世界の猫様はなんでもしっている。

・ヒーローと怪人は仲良く喧嘩してるだけだから放っとく。ものすごく超然とした目でのんびり人類を眺めつつ、新しい「猫の役割」に従事する猫様。世界観たまらん好き。

・「どこへ行くのも何をするのも自由だ。猫というのはそういう生き物なんだからな!」



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