【長編】曲空虚空 : 閑人書房

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【長編】曲空虚空

2020年10月5日 

平凡な高校生と空から降って来た少女の、都市の行く末をかけた近未来アクションFT


作品名曲空虚空
作者古宮九時(藤村由紀)
文字数約14万9000字
所要時間約5時間
ジャンルSFファンタジー(近未来)
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レビュー

「あなたにします――あなたを私の『代行者』とします」


十二の各都市に一つずつある「空塔」を支えとして、上空に張りめぐらされた鏡面体の空。その向こう側には、同じ鏡面を空とするさかさまの都市「虚都」があるという。それは誰ひとり確かめた者などいない絵空事じみた「公式記録」であり、平凡な一高校生であるアキラにはなんら関係のない話であるはずだった。――さかさまに浮かぶ少女が空から降って来て、とある「ゲーム」への協力を求めてくるまでは。

機能的でありながらどこか幻想的な色彩を帯びる、造られた空の下の街。平凡な高校生活の中に突如として紛れ込んできた、非現実感を際立たせるさかさまの美少女。ややトリッキーで痛快な異能力バトル、そして謎の多い「ゲーム」の行方を追ううち、少しずつ明かされていく真実とかすかな違和感――その全てが鮮やかに塗り替わる瞬間は衝撃の一言。

異なる世界に生きる少年少女がそれぞれに大切なものを守るための、ちょっと切なくて清々しい近未来FT。

キャラクターpickup
瀬戸アキラ
「……言ってみろよ。何しにこっちに来たのかって。私欲で参加してるとか都市攻略とか、なんか物騒なこと言ってただろ。いいから本当のこと言ってみろよ」
「さかさに浮いてるってな。それだけで違う生き物って感じ」
「お前にはどこのシギルも渡さない。――俺が、ここで排除してやる」
…第八都市に住む平凡な高校生。転移ポートを使わずに徒歩で移動したり、鏡面体の空を眺めることを好み、ミニチュア模型が趣味。空の向こうからやって来た「来訪者」を現実にあるものとして認識する特殊な素質を持っているらしい。
シェラ・ハーディ
「でも、私は違います! 私は、この世界をどうしようとも思ってないんです!」
「綿菓子みたいにふわふわ! でも外はさくさくですよ!」
「それでも私は……代行者は、あなたがいいです」
…アキラの前にある日突然降って来た、空の向こうからの来訪者。常にさかさまに浮かんでおり、「契約」を交わしたアキラ以外の都市住人には見えない。アキラの住む都市に関わる、ある「権利」を賭けたゲームに参加している。

・予定外れの雨の中、光とともに空から降って来て、さかさまに浮かんでいる美少女。非現実的で幻想的な出会い。

・トリッキーな能力で工夫して戦う異能力バトル、めちゃくちゃ面白い。

・最初は勝手に話進めようとしてたのに、予想外に物騒な展開になってきたせいで、申し訳なさそうにしょんぼりするシェラ。かわいい。

・上下さかさまという不審点が美貌を相殺している…とか言ってたけど、天井にさかさまに座ってるのとか、さかさまのせいで微妙に動きにくそうにしてるのとか、めちゃめちゃ可愛いですよね。ね。前言の撤回を求める。>アキラ

・だぼだぼのスウェットの上だけ着てたり、ドライヤーうまく扱えなくてもたもたしたり、寝起き悪くて無防備にぼんやりしてたり、シェラさんが立て続けに可愛すぎる。

・興味をひかれたものに近寄ってぺたぺた触ってみたり、行動が幼児みたいなシェラさん。

・「右手に持ってるやつの方が似合う」「これくらいなら俺が買ってやるよ」こ、この見てないようでちゃんと見てる感じ…これはモテる。

・ブタのぬいぐるみとか、ニーナの曲とか、メロンパンとか、シェラが気になってるものをすぐに買ってあげちゃうアキラ。可愛いからしょうがないね! もっと甘やかしていこう!

・トークでシェラに考えが読まれてるのを忘れてつい「かわいいな」とか思っちゃうアキラと、真っ赤になって逃げるシェラ。ときめく。

・シェラさん本当にかわいい。聡明で、ちょっとだけ悲しげで、ときどき痛々しく、いとけなくて、ひたむきな目をした、花のように笑う少女。

・セクハラ発言してかわいい女の子二人に蹴られたりつねられたりするアキラ。ふつうに羨ましいんですが?

・最初に会ったときシェラに「弱っちそう」とか言われたのをしっかり覚えてるアキラ(笑)

・喧嘩慣れしてるわけでもないのに、攻撃したりされたりすることに案外抵抗がなさそうだったり、捨て石になってもいいとか言ったりしていたのは、根本的な死生観がまったく違うせいだったのか! 自分の死を「無駄な喪失ではない」という視点で語れる「平凡な一高校生」なんかいてたまるかって思ってたよ! そういえばシェラも死生観が違う的なこと言ってた…。都市の人間を平気で殺していく「来訪者」たちよりも当然アキラのほうが自分に近い感覚を持っているはずだと思い込んでいたから、全然意味わかってなかった。ここの反転すごいな?

・というか、「死ぬ」「殺す」っていう表現は実は来訪者しか使ってないんだな。アキラは「終わる」とか「排除する」みたいな言い方しかしてない。

・つまり都市住人はほとんどがNPCで、ごくたまに中の人がいるアバターもウロウロしてる、ぐらいの感覚…?

・オモチャの杖をもてあそんでただけで「変わったことをしてた」って言われたりとか、もろもろのちょっとした違和感が一気に「そういうことだったの!?」で解消する感じ。カタルシスがある反面、かなりショッキングというか、でも言われてみればかなり伏線あったというか、さすがBabelの作者様…。

・「おいしいってすごいことですよ」メロンパンを食べて、日常の幸せをうたうニーナの歌の一節を口ずさんでいたシェラ。姉が見て、感じていたものを、ひとつひとつ大切にたぐっていたんだなって思うと、今になって色々思い出してじわっとくる。

・消えゆく少女と最後のくちづけ。やわらかな寂莫感と清々しい余韻が残る美しいシーン。

・ことあるごとに、さまざまに異なる色合いの空を見上げているアキラ。エメラルドグリーンの空、白い空、薄紫の空、赤い空、そして青い空。どのシーンも空の色のイメージと印象的に結びついていて好き。



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