【中短編】僕の理知的な彼女(連作) : 閑人書房

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【中短編】僕の理知的な彼女(連作)

2020年11月1日 

ヘタレ大学生と生真面目天然ボケな年上彼女の連作ラブコメディ


作品名僕の理知的な彼女
文字数約1万字
所要時間約20分
作品名永遠のカゼ
文字数約6000字
所要時間約10分
作品名とうきび畑でジャンケンを
文字数約1万7000字
所要時間約35分
作品名彼女の幸福な一週間 
文字数約2万9000字
所要時間約1時間
作品名賭けの顛末
文字数約7000字
所要時間約15分
作品名キッチンテーブル
文字数約5000字
所要時間約10分
作者葉山郁
ジャンルラブコメ(現代)
掲載サイト氷の花束(※トップページ)
※2020年11月現在、当該シリーズページから各話へのリンク先URLが間違っているようですので、暫定的に上記「作品名」から各作品ページへ直通リンクを張らせていただいております。

レビュー

「単刀直入に言おう、仲井健一君。私は君と別れることにした」


深夜バイト明けの重い身体を引きずって、いつもの待ち合わせ場所に向かった大学生の“僕”は、交際中の年上彼女・北沢佳代さんから唐突に一方的に別れを告げられた。
理知的過ぎて何を考えているのか分からないいつも通りの冷静さで、突然それだけを宣告されて、本当なら怒ったっていいところなのかもしれないけれど、“僕”は彼女にある負い目があって…!?

潔くて凛々しくてちょっとズレてる佳代さんと、なんとかして彼女とやり直したい健一君。
胸に痛かったり、微笑ましかったり、もう笑うしかなかったり、とても幸運でちょっと不格好なふたりの恋が、色々な人の目線から色々な風に描かれていて面白い。
そつなく周囲に合わせながら生きてきた健一君は、すごく変わり者だけどとても綺麗なその人の手を再びとることができるのか!?

学者肌で思考回路が斜め上な彼女と好青年風なヘタレ男子の、ある恋の顛末をめぐる連作ラブコメディ。

【僕の理知的な彼女】

・「単刀直入に言おう、仲井健一君。私は君と別れることにした」単刀直入に結論だけを言っちゃ駄目なことってあると思うんだ…。しかも本当にそれだけ宣言して去ってったもよう。いかん、大ショック受けて何日も引きずってる主人公の反応も含めてめっちゃ笑ってしまう。

・失恋してみっともなくヘコんで自分のことでいっぱいいっぱいで、みんなかわいそうだけど頑張ってんだよ。「僕らは僕らなりに精一杯やったはずなのに。」この酒盛りシーン地味にとても好き。

・「ああ、と不意に胸が泣くように軋んだ。――僕は、この人が、好きだ。」「たとえ別れたとしても振られたとしても、この人を絶対に傷つけてはいけない。傷つけない。なにがあっても。」………からの、「ばれてるーっ!」このクドいくらいの前フリからの急転直下。駄目だってこんなん、笑うって。完全にダチョウ倶楽部のやり口じゃないですか。

・口調までそのままトレースする佳代さん(まったく悪意にとってない)も、それで一瞬にして犯人を突き止める健一君も、「常時には目に付きにくい優しさ」が実は後ろめたさゆえだった昴君も、全員おもしろすぎない? しかしこの流れはカッコ悪いどころじゃないよ、健一君!

・理知的なド天然…。このひとは確かに一度ハマったら抜けられない沼っぽい感じがひしひしする。

・そしてその場の勢いで「誕生日プレゼント」をそのまま「エンゲージリング」ということにする健一君。逃げられかけた直後だしね、いけると思ったときにいかないとね。どこまでもかっこ悪いけど、佳代さんが嬉しそうだから結果オーライ。


【永遠のカゼ】

・このふんわり爽やか好青年風のイケメンが、【僕の理知的な彼女】で失恋してガーンってなってボロボロのヘロヘロになってたんだと思うとまた違う種類の笑いがわいてくる(笑)

・恋した相手から突然の告白をされて、まず「こいつは大丈夫か」って思う佳代さんの感性、すき。

・そもそも健一君が自分のことを好きなのだとは最初っから微塵も思ってなくて、そのうえで「これは役得」とか思いながら付き合ってる佳代さん…本当おもしろいな、このひと。

・何気なさを装って健一君と遭遇しようとする佳代さん(バレバレ)、可愛い。

・健一君が罰ゲームで自分に告白してきたんだと知った佳代さんのリアクション→「買ってもいない宝くじにあたったような幸運」って、めちゃめちゃズレてるようで、実はものすごく正しいような、なるほどそういう考え方もあるかって至極納得させられるような、謎の説得力が…(笑)

・思考回路のわりに卑屈っぽく見えない、むしろ潔ささえ感じる佳代さんのキャラクター、すごいな。すごい好きだ。

・「君の風邪が永遠に治らないように、私は薄情だがいつも望んでいる」


【とうきび畑でジャンケンを】

・昴君、いっつも殴りたいとか絞め殺したいとか思われてんな。

・不器用でちんまい俺っ娘、かわいい。

・女子目線から見た健一君の爽やか好青年っぷり、なんかちょっと笑ってしまう…。

・一番いちゃ駄目なタイミングに一番いちゃ駄目なひとが現れるの心臓に悪いな。「邪魔をしたか、失礼した」そんで一切の動揺も嫌味もない佳代さん本当おもしろい。落ち着いて修羅場に対処していたイケメンが一瞬にしてテンパるのも笑える。

・「あの子が言わなかった台詞。あの子が言えなかった言葉。」「ご婚約、おめでとうございます。健一先輩」このシーンすごい色々こみあげるな…。ぜんぶ先に言われてしまって、片想いを「おめでとう」で終わらせるしかなくなってしまった夏樹ちゃん、切なすぎる。

・いっつもヘラヘラしてる昴君が本気でイラッとしてる感じも、大真面目にすっとぼけたこと言って険悪な空気を停止させる佳代さんも、全然噛み合わない相思相愛カップルも、ぜんぶすき。

・小っちゃい子どもの頃から一切変わってなさそうな幼馴染同士のやり取り、好きだなぁ。

・「分かっていた。人が人を想う気持ちにいつでも平等はない。」「好きだと結局いえなかった自分が嫌だった。知ってて知らないふりをする自分が嫌だった。あの子みたいにぶつかれない自分が嫌だった。好きになってもらえない――自分が嫌だった。」

・夏樹ちゃん、もうちょっと昴君にも興味持ってあげて…目の前でちょっと告白っぽいこと言ってるから。夏樹ちゃんの反応気にしてるから。でもどっちにしろこの子の評価「女ったらしで馬鹿で無神経でデリカシーのない最低の塊」だからな…(笑)

・健一君は結構印象変わるけど、佳代さんは誰の目から見てもブレないなぁ。あと、夏樹ちゃん目線だと二人のエピソードが何かちょっと美化されて見えるのが地味に笑える。


【彼女の幸福な一週間】

・健一君視点の話では動揺も見せずに交際を了承したはずの佳代さんが、ホトケ先生視点だと行動に動揺が出まくってたり、見るからに浮かれてたりするの、めちゃめちゃ可愛いな。

・健一君が婚約してから鈴木ゼミに寄り付かなくなった夏樹ちゃんにイライラする昴君。「あいつが好きになるのは俺に決まってんですよ」夏樹ちゃんの好みのタイプが健一君みたいな紳士系なら、昴君はまずそのイジメっ子ノリを何とかすべきでは…と思うのだけど、その理屈でいくと自分のスタンス変える気はさらさらないんですね(笑)

・年の離れた姉二人におもちゃにされて育った健一君。その生い立ちはめちゃめちゃ納得する。

・「彼女は生まれながらの探求者です。」「君が、そばにいてあげてください。君が、感じてあげてください。彼女は伝える努力を怠る人ではないのですから」

・ものすごく綺麗になって周りの度肝抜いてるのにまるっきり気づいてないし、困るでも照れるでもなくいつも通りのテンションな佳代さん。すき。

・「じゃあお前、もう少し待てよ」告白すら成立してない段階でそこまで言える昴君、まじ昴君。これはもう勝手に気づくまで放っとくスタンスか。。夏樹ちゃんが「あれ?」ってなったときには完全に距離感おかしいことになってそうだな…(笑)

・いかに健一君が自分にとって大事かをレポートにして提出しようとしていた佳代さん、まじ佳代さん。

・「一生一緒にいて、ずっと元気で君のそばに僕もいたいし、いてあげたい」「一週間だ。私は君と一緒にいられるなら、一週間でかまわない」このふたりの愛情表現の違い、性格出てて好きだなぁ。たくさんの幸福な一週間がずっと続いていくといい。

・「幸せそう」という表現に「彼女なりに」ってついちゃう佳代さんの不器用さ、愛しい。


【賭けの顛末】

・周囲にそつなく合わせてるいけ好かないやつ…。手厳しいなぁ昴君。

・「俺、年上のああいうタイプは生理的に受けつけないんだよ」こうなってから健一君のこのセリフ見ると、フフッてなる。

・健一君はほんと視点によって印象変わるなぁ。ギャップがでかいのは、猫かぶりっていうよりか、一緒にいる相手とか場面に合わせるカメレオンタイプなのか。悪友たちといるときはとりわけ性格悪く見えるよ?(笑)

・庇護対象の女の子には普通に優しくできるけど、気の強い年上女性は苦手…っていうかもうハッキリと「嫌い」なんだろうな。姉たちに虐げられてきてほんとに辛かったんだね…って感じがひしひし伝わってきて地味に笑える。

・佳代さんは、冷静で堂々とした態度とは裏腹に、実は自分に自信がないし誰よりも相手を尊重する人だから、びくびくしてた健一君が「あれ…?」ってなってった経緯も何となく想像がつく気がするなぁ。そんで普段は鉄仮面なのに、自分相手にだけちょっと油断して笑ってくれたりなんかしたわけだから、それはトドメさされるのも無理はないですよね、佳代さんはかわいいからね!

・友人カップルのトリックスターになってる昴君の、そのくせ全っ然興味ないしそんなつもりもないみたいな感じ、めっちゃ面白い…。引っかき回すならせめてもうちょっと興味持って(笑)

・「やさしいとかよわいとかそういうんではなく、姑息かつ利己的なだけだった。」これくらいバッサリ言ってくれると気持ちいい(笑) 健一君は健一君で一応、佳代さんを傷つけまいというのがあって「絶対にばらしてはいけない」って悩んでたりするわけだから、昴君のも極端な見方ではあるけど、でも間違ってもないみたいな感じ。

・そして佳代さんはやっぱり佳代さんだからブレない。かっこいい人だ。


【キッチンテーブル】

・ちょいちょい佳代さんの生真面目天然ボケが炸裂してるの、めちゃめちゃ好き。

・あと健一君は間が悪すぎて、もうそういう星の下に生まれついたとしか(笑)



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