【短編】月下世界紀行 世界の果て : 閑人書房

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【短編】月下世界紀行 世界の果て

2020年10月22日 

世界の終わるところを見にゆく、旅人の異世界紀行


作品名月下世界紀行 世界の果て
作者椎堂かおる
文字数約1400字
所要時間約2分
ジャンル異世界風土記
作品リンクカクヨム(※連作短編集)
Pixiv(※連作短編集)

レビュー

それは自殺なのか、それとも冒険なのか。


とある旅人の異世界紀行。この世はそこから終わっていくのだという、世界の最果てを見にゆく。

ゆっくりゆっくり近づいてきて、いずれはすべてを呑み込んでしまうであろう「終末の壁」。北の海の果てにあるそれは、離れたところからなら遊覧船で観光することもできるらしい――。

謎めいた圧倒的不条理を前に、心もとないような恐怖感に襲われる一方で僅かばかり心が躍る、目に見える終末を訪ねる物語。

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(連作短編ですが、ひとつひとつが独立した物語で時系列要素は一切ないので、どこからでも読めます。)

・「この世が終わると聞いて、世界の壊れるところを見に行ってみた。」…「この世が終わる」と「見に行ってみた」が一文に入ってるの、違和感しかないな。ユーチューバーか。

・遊覧船で観光できる「終末」。じわじわと少しずつ少しずつ近づいてくる、北の海の果ての黒い壁。

・「世界の果て」が普通に見にいけるくらい近いところにあるの面白いなぁ。最初ぎょっとしたほどには奇妙な感じがしないという奇妙さ。ゲームのワールドマップみたい、ループしないタイプの。現実にも、宇宙をずーっと進んで行けばどこかにはあるのだろうか、この世の果てにあたる場所が。

・差し迫った危険ではないけれど、いずれ世界を呑み込む終末。深く考えたらめっちゃこわくなるやつ…。でも「恐ろしいものだなあ。わくわくする」という感覚もちょっとは分かる気がする。

・いややっぱ全然分かんなかったわ! コレに特攻かけようとしてんの、このひと!? 「新しい冒険に胸ときめかせる少年のよう」………知的探求心がすべてを上回っているタイプの御仁…。

・トランシーバーでリアルタイム実況聞かされるだけでも怖いよぅ。

・終末の壁にひとりで向かう博士を困った顔で見送る人々。全員が、呑まれて消えるだけだろうと思っている。

・「これが終末か」それきり沈黙するトランシーバー。このあっけなさ、分かっていたけどちょっと呆然としてしまう。お、おわった…?

・博士は最後に何を見たのか、そもそも本当にその瞬間に終わってしまったのか、壁の向こう側は存在しなかったのか、実際に行ってみなければ知りようはない。世界の謎はとても魅力的ではあるけれど、この人のように一直線に目をきらきらさせて突っ込んでいくのは無理だなぁ。未知への冒険にこれほどの情熱を燃やせる人生は少しだけ羨ましい。



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