【短編】月下世界紀行 木樵の王
森の上王の即位式の祭りを見物にきた、旅人の異世界紀行
作品名 | 月下世界紀行 木樵の王 |
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作者 | 椎堂かおる |
文字数 | 約1万3000字 |
所要時間 | 約25分 |
ジャンル | 異世界風土記 |
作品リンク | カクヨム(※連作短編集) Pixiv(※連作短編集) |
讃えよ王の中の王、森の上王を。真の英雄にして、決して奢らぬ木樵の王。
とある旅人の異世界紀行。絶え間なく戦を繰り返してきた、森の小さな国々。それらを統一せしめた上王、木樵の王と呼ばれるその人の、即位式の祭りを見物しにやって来たのだが…。
「木樵の王」として、建国の父として、この国の民に崇められる銅像は、果たしてどんな姿をしているべきだろうか――?
追いかけて追いかけて追いかけて、どうあっても追い抜けない背中がある。誇り高き木樵の国。その建国前夜を駆けた、名もなき一人の英雄と、英雄になれなかった男。
讃えよ王の中の王、真の英雄を! 快哉を叫びたくなるような、心わき立ち胸の熱くなる、とある英雄の物語。
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…世界の終わるところを見にゆく、旅人の異世界紀行
・「勝利は奪ったが、侵略はしなかった。彼らはただ、敗北したくなかっただけなのだ。」誇り高き木樵の国。さらっとした背景描写が熱くて、これから訪れる旅先への期待感が高まる。
・倒木に襲われる旅人さんの「まさか私の上に倒れたりはすまい。そのはずだ。」って、笑いごとじゃないんだけどちょっと笑ってしまうな。このひとはあくまで傍観者だから、あんまり「物語の中の登場人物」って感じがしないというか、妙に親近感が沸く。
・「なにをやってるんだね、そこで」「あなたの伐り倒した樹に足を挟まれまして……」なんだか間抜けなやり取りだなぁ。
・まさかの王様…。え、そちらこそ、一体なにをやってるんだね!? えらい気さくな御方だ…。
・「彼は私に相談していた。通りすがりの旅の者に。ただ行き過ぎるだけの、土地にも血筋にも何の縁もないものに。」尊大さがなく、気さくで、人の話によく耳を傾ける名君が抱えた悩み事とは。
・「ついては今から身を投げるゆえ、そなたたちは戦いなさい。森の男の誇りを見せよ」潔く死んでいった、森の国の誇り高き姫君。これは燃えたぎる。
・許嫁の国を見捨てて逃げ出すつもりだった王子と、死にゆく姫君を腕に抱き、勇猛果敢に立ち上がった名も無き木樵の男。「私に足りなかったのは、勇気だけだったのだ。一命を賭して戦う、向こう見ずな勇猛さが」
・援軍を出す支度を調えて、だけどすぐには戻らずに英雄が死ぬのを待っていた。この時点でもう完全に負けてしまっているのだな。英雄が英雄のまま死んでしまったことで、なおのこと越えられない壁になった。
・「果たして私は英雄として、男として、この木樵の男を越えられただろうか。」誰がそうだと言ったとて、陛下ご自身がそう思うのは難しいのではないか。
・陛下を気の毒がる旅人さんも好きだなぁ。「その背を追うからこそ、踏破できる道のりがある。そしていずれは、その背に感謝する。」「あなたもよくやったと、一言言ってやりたかった」
・ラストやっばいな…めちゃめちゃに胸が熱くなる。「彼は己に打ち勝った。その戦いの勝利こそが、彼を真の英雄にするだろう。」誇り高き木樵の国の、偉大な英雄を讃美せよ。